研究課題/領域番号 |
22560305
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
三田地 成幸 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 教授 (40339768)
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キーワード | 光物性 / ナノ材料 |
研究概要 |
本年度は、(1)「レチノイン酸とキトサンとの交互吸着膜構造と光電流特性との関係」について、Alq_3を適用したITO/ITO光受容デバイスを測定した結果、最短で2秒間隔での光電流応答が確認され、応答間隔を1/10にまで短縮できた。また、光電流の立ち上がり時間においては、先行研究の3秒から今回作製したデバイスで1秒未満にまで短縮することに成功した。これらのことより、交互吸着法を用いた光受容デバイスに、電子輸送層を導入することで光電流応答の高速化に大きな改善を得られることが明らかになった。今後、更に高速な光シャッタの導入により、本デバイスの高速応答特性の限界を見極める測定を行う予定である。続いて(2)「レチノイン酸とキトサンの分子機能電極上へ形成された交互吸着膜(バイオフォトニックデバイス)の再生とそのメカニズム解明」に関しては、既にキトサンにレチノイン酸を分散させたスピンコート膜中において光電流応答が失活した膜に再生処理(化学処理と逆バイアス印加)によって複数回再生させることに成功している。この成果を、交互吸着膜(バイオフォトニックデバイス)の再生にも適用し、生体と同様の失活した膜の再生を検討した。その結果、交互吸着膜では失活するのに相当の期間を要することを見出し、微弱な光電流回復ながら再生現象の兆候を捉えることが出来た。今後はこの再現性を追求していく予定である。最後に、(3)「レチノイドを用いたバイオフォトニックデバイス適用先の明確化」について、昨年度得られた長寿命の光電流応答特性を詳細に解析すると、その外部量子効率は4.53という驚異的な値を示すことが明らかとなった。これは、革新的バイオフォトニックデバイス実現の可能性を示す成果と言える。単一光子検出器やビジョンチップ、高効率太陽光発電への適用の可能性が示唆され、今後は最適な応用形態を一本に絞って最終年度の検討に活かして行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の3項目の研究課題において、(1)の「電子輸送層の導入による高速応答化」は100%の達成率である。(2)の「交互吸着膜(バイオフォトニックデバイス)の再生」は、微弱ながらその兆候となる現象を捉えたことは80%の達成率と評価できる。(3)の外部量子効率が4.53の解析結果は物理的に極めて重要な意味を持ち、再現性が確認できれば150%以上の達成率である。なお、再現性がまだ確認できない現時点では100%の達成率と自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題(1)、(2)、(3)共に重要な成果が出ている。(1)「高速応答化」については、今後、今年度末に購入した高速光シャッタを用いて測定し、次年度においてその高速応答限界を見極める。(2)「交互吸着膜(バイオフォトニックデバイス)の再生」については、その再現性とより明確な再生現象の捕捉に努める。(3)「外部量子効率4.53に基づく単一光子検出器実現の可能性探究」については、まず超高効率な外部量子効率の再現性の確認に向け、質の高い交互吸着型バイオフォトニックデバイス作製に努める。昨年度と今年度蓄積してきたpHや濃度の最適作製条件の知見が今後威力を発揮するものと期待される。
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