スピン分極率が100%と予測されるハーフメタルの第1候補としてCoFeAlSiホイスラー合金を,絶縁材料としてはAlOxを取り上げ,グラニュラー膜を作製し,そのTMR特性を評価してきた。その結果,室温で約18%のグラニュラー膜としては最大のMR比を得ることができ,これはCoFeAlSiホイスラー合金の高いスピン分極率を反映しているためと考えられた。しかし,この結果を得るためには,特定のガラス基板を使わなければならないことが分かるまで多くの時間を費やした。10%程度のMR比を示す試料は比較的再現よく作製することができるが,この程度のMR比では,試料が,CoFeAlSi合金のハーフメタル性を反映した結晶構造を示さなくても可能でことが分かった。 作製した試料のX線回折結果を詳細に調べたところ,10%以上のMR比を得るためには,わずかではあるがハーフメタル性を特徴づける結晶構造をとる必要があることが明らかとなった。そこで,バッファー層として使用しているMgOの膜厚を変化させて,MR比の依存性やグラニュラー膜の構造を調べた。また,ガラス基板の表面ラフネスをAFMを用いて調べ,グラニュラー膜の構造との相関性を検討した。さらには,Si基板上にMgOやSiNなどをバッファー層として,膜厚を変化させてグラニュラー膜の構造の制御を試みた。しかし,現時点では10%以上のMR比を示す試料の作製条件を明確にすることはできなかった。
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