研究概要 |
エピタキシャル薄膜単結晶形成における下地基板の制約を軽減するため,独自の技術開発をめざしている.今年度は結晶化装置を導入し,装置の基本的な特性について確認と検討を行った.結晶化処理は大きく2つの処理過程となっており,第2ステップでは単結晶基板片を用いた熱処理の温度制御が重要である.温度制御装置並びにヒータ部の改造を行い,結晶化処理装置の性能向上を図った. 熱処理系統の改良後にBi系YIGへと適用したところ,一部に結晶が認められ,今後の熱処理条件の最適化を図ることによってCe系YIGと同様に結晶薄膜の形成が可能であることが確認された.さらに,本手法の広汎な適用について検討を進めるため,材料としてLiNbO3薄膜を対象とした実験も行った.コンタクトエピタクシー法を用いた薄膜形成フローに沿ってLiNbO3の形成を試みた.アモルファス状の薄膜堆積条件としては,基板温度300℃,酸素5%アルゴンガスによるRFマグネトロンスパッタによる薄膜形成を行った.基板は1インチφの石英基板とし,出発材料にはLi_<1.2>NbO_3の焼結体ターゲットを使用した.結晶化前の膜厚は約400nmである.一例ではあるが良好な配向が得られている.作成した薄膜の圧電応答を測定した結果はいずれも良好な値を示した.最も良好な値を示したサンプルの場合,X-cut水晶との比較測定による圧電定数d_<33>は,11.5pC/N程度であり,良好な値であるといえる.熱処理条件や他の方位については引き続き処理条件の最適化を図りながら実験を行う必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
装置特性に依存しない成膜条件の最適化をはかるため,測定試料の特性の再現性に注意を払いながら研究を遂行する。磁気光学薄膜や誘電体薄膜の評価として,X線回折法の他,磁気光学特性や圧電定数の定量的な評価などを行い,成膜条件(結晶薄膜形成の主たるファクター)の最適化を図る計画である.
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