研究概要 |
本研究では、従来のシリコン系太陽電池だけでは賄いきれない需要に対処するため、次世代のCu(In,Ga)Se_2(CIGS)系薄膜太陽電の開発を目指す。我々が開発した三元化合物からの連続成膜法を用いて、1.0~2.4eVのバンドギャップ領域の次世代CIGS系薄膜太陽電池の高効率化を目的として実施する。単接合型や多接合型太陽電池への応用を実現するためには、色々なバンドギャップを有する薄膜材料が必要である。一方、バンドギャップの調整のみで高効率な太陽電池が作製できるわけではない。太陽電池グレードのCIGS系薄膜を作製することが重要である。低い開放電圧や曲線因子は重要な改善点の一つである。そのため、適度なバンドギャップを有するCIGS系薄膜ごとに成膜条件を検討するとともに、太陽電池を作製し、その性能との関係を明確にする。3年計画の初年度は以下の知見を得た。 (1)CuGaSe_2+CuInSe_2/In_2Se_3+Ga_2Se_3からの蒸着によるCu(In,Ga)Se_2薄膜と太陽電池の作製 蒸着材料となるCuGaSe_2化合物およびCuInSe_2化合物を作製した。これらを用いて、Mo/ソーダライムガラス基板上に、Ga量の異なるCu(In,Ga)Se_2薄膜及び太陽電池を作製した。その結果、Ga/(In+Ga)比の増加につれて、バンドギャップの増加を確認した。Ga/(In+Ga)比が約0.8の太陽電池で、変換効率7.25%の従来より高い値が得られた。 (2)流化処理によるCu(In,Ga)(S,Se)_2薄膜と太陽電池の作製 Cu(In,Ga)Se_2薄膜を硫化処理することによりCu(In,Ga)(S,Se)_2薄膜及び太陽電池を作製した。その結果、薄膜の表面にSが取り込まれていることを確認した。S量の増加につれて太陽電池の開放電圧が増加したが、効率改善のためには最適なS量があることが明らかになった。
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