研究概要 |
平成23年度においては,熱アシストスピン注入メモリの可能性を探るため,以下の研究を行った. 1)磁気異方性が充分大きく,熱的に安定な極めて微細なメモリ素子でも低い電流密度でスピンスピントランスファートルクによる磁化反転が可能とするため,書込電流による加熱で磁気異方性が大きく低下する希土類-遷移金属膜をメモリ層に用いたSi/Ta/CuAl/Pd/Co/CoFeB/Cu/GdFeCo/Cu/Taを作製し,巨大磁気抵抗効果によりメモリ層のスピン注入磁化反転を調べた.様々なGd組成をもつGdFeCoメモリ層を用いて充分大きな垂直磁気異方性をもつメモリ膜が得られ,1.6×10^7A/cm^2のかなり小さな電流密度でスピントランスファートルクによる磁化反転が確認された. 2)スピン注入磁気メモリ高速動作する上で重要になるスピンダイナミックスについて検討した.超短パルスレーザを用いたポンプ-プローブ法によりCo/Ni多層膜の垂直磁気異方性とダンピング定数の関係を調べた.その結果,ダンピング定数は垂直磁気異方性磁界に依存せずほぼ一定値0.035であり,垂直磁気異方性はダンピング定数にほとんど影響を与えなかった.磁気異方性とダンピング定数はともにスピン軌道相互作用に密接に関係すると考えられるが,磁気異方性は多層膜の界面が,ダンピングにはバルク的な性質が関与している可能性がある.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでは,非常に長いパルス幅の電流注入で希土類-遷移金属アモルファス膜をフリー層のスピン注入磁化反転におけるフリー層組成依存性を検討した。今後は,実際のメモリ素子で用いられるような短い電流パルス幅でパルス幅依存性およびパルス振幅依存性を検討し,高速動作を確認する.また,電流パルス幅依存性からフリー層のエネルギー障壁の組成依存性を,振幅依存性から熱アシストによるエネルギー障壁制御と,その組成依存性を調べ,熱アシスト磁化反転に最適なフリー層組成を明らかにする.
|