研究概要 |
平成24年度においては,熱アシストスピン注入メモリの可能性を探るため以下の研究を実施した. 大きな垂直磁気異方性を有し,キュリー温度の比較的低いTbFeアモルファス膜をメモリー層とした[Co/Pd]/MgO/TbFe 垂直磁化トンネル接合を作製し,そのトンネル磁気抵抗特性および熱アシスト書込み特性を調べた. トンネル磁気抵抗特性を測定した結果,MgO厚 1.4 nmの磁気トンネル接合では,低バイアスで,9%のMR比,342 Ωμm2 程度の低い面積抵抗値が得られ, MgOは低抵抗化に適した材料であることがわかった. 熱アシスト書込みについては,作製したトンネル接合を,2.4 μm X 2.4 μmに加工し,弱い外部磁場をかけながら,パルス幅100 msecの電流パルスをトンネル接合に流し発生するジュール熱によるアシスト磁化反転を試みた.パルス電流値-抵抗特性を測定したところ,二つの磁性層の磁化が反平行状態から平行状態へ遷移したことを示す抵抗の減少が見られた.その際の電流値から見積もると,およそ2 mW/μm2の電力密度のジュール熱を与えることで低磁場でも磁化反転が可能であることが確認できた.また,MgO厚 1.2 nm の微細加工膜では,56.8 Ωμmのより低い面積抵抗が得られた.今後,さらなる低抵抗化を進めるとともに,この膜について,スピン注入による磁化反転時の熱アシスト効果について検討する必要がある.
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