研究課題/領域番号 |
22560317
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
大嶋 重利 山形大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (40124557)
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キーワード | 高温超伝導薄膜 / 超伝導フィルタ / エピタキシャル成長 / 積層膜 / YBCO / ドライエッチング |
研究概要 |
本研究は、高耐電力超伝導フィルタを試作するために、3次元マトリックス線路を提案し、その有効性を検証するものである。超伝導マイクロストリップ線路(SMSL)の耐電力は、線路端に流れる集中電流値の大きさに制約される。これを低減できれば、耐電力の大きなマイクロ波デバイス(フィルタやアンテナなど)が設計できる。平成23年度は(1)YBCQ/CeO_2/YBCO/CeO_2/…ヘテロ多層膜の作製と評価(2)積層膜の微細加工技術の検討(3)フィルタの設計と評価を目標に実験を行い、次のような成果を得た。 (1)レーザー蒸着法によりYBCO/CeO_2/YBCO/CeO_2/…の3層ヘテロ多層膜を作製し、評価した。X線回折及びAFM表面モフォロジーの評価の結果、表面が平滑な3層ヘテロエピYBCO薄膜の作製に成功した。また、3層ヘテロエピYBCO薄膜の臨界温度(Tc)は86K以上となり、単層膜とほぼ同じであることが分かった。 (2)3層ヘテロエピYBCO積層膜の微細加工を、ECRドライエッチングにより検討した。ECRエッチングプロセスでYBCO薄膜を加工するとき、YBCO薄膜からの酸素離脱が生じ、超伝導特性が劣化することを見出している。それを防ぐために、エッチィングを間欠的に行う新たな、間欠ECRドライエッチング法を確立している。その手法を3層ヘテロエピYBCO積層膜の加工にも応用した。その結果、絶縁層であるCeO2薄膜のドライエッチング加工が難しく、一番上の層のみが加工されることが明らかとなった。3層ヘテロエピYBCO積層膜の微細加工はH24年度も引き続き検討を行うことになった。 (3)平成24年度で検討する予定の、超伝導フィルタの設計を前倒しで行った。電磁界解析ソフトSONNETにより、フィルタの設計法を確立した。 以上のように、平成23年度の研究はほぼ目標をクリアしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)レーザー蒸着法によりYBCO/CeO_2/YBCO/CeO_2/…の3層ヘテロ多層膜の作製に成功したこと。 (2)YBCO/CeO_2/YBCO/CeO_2/…の3層ヘテロ多層膜のドライエッチングを検討しその問題点をクリアにしたこと。 (3)超伝導フィルタの設計法を確立したこと。
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今後の研究の推進方策 |
(1)YBCO/CeO_2/YBCO/CeO_2/…の3層ヘテロ多層膜の加工条件を検討し、マトリックス線路に加工できるかどうかを明らかにする。 (2)NbN/AIN/NbNの積層膜を新たに検討し、マトリックス線路の作製を検討する。 (3)3層超伝導積層膜のマトリックス線路を用いたフィルタを設計し、それを試作する。試作したフィルタの耐電力を評価し、通常のマイクロストリップ線路フィルタとの耐電力を比較・検討する。
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