研究概要 |
本研究は、3次元マトリックス線路を提案し、それが超伝導フィルタの高耐電力化に有効かどうかを検証するものである。超伝導マイクロストリップ線路フィルタの耐電力は、共振器の線路端に流れる集中電流値の大きさに制約される。これを低減できれば、耐電力の大きな超伝導フィルタが実現できる。平成24年度はNbN/AlN/NbNの3次元マトリックス線路を作製し、その線路を用いてフィルタを試作し、フィルタの耐電力を測定した。その結果、3次元マトリックス線路はフィルタの耐電力向上に有効であることを明らかにした。その詳細は以下の通りである。① DCマグネトロンスパッタリング法により、 NbN/AlN/NbNの3層ヘテロ多層膜を作製し、その構造、超伝導特性を評価した。その結果、表面が平滑な3層ヘテロエピNbN薄膜の作製に成功したことが明らかとなった。②3層ヘテロエピNbN/AlN/NbN積層膜の微細加工を、ECRドライエッチングにより検討し,3次元マトリックス線路が作製できるかどうかを検討した。ECRドライエッチングプロセスでは、NbN薄膜から窒素原子が離脱することが予想され、そのために超伝導特性が劣化する可能性がある。それを防ぐために、エッチィングを間欠的に行う新たな、間欠ECRドライエッチング法を確立した。その結果、超伝導特性の劣化が殆ど見られないNbN/AlN/NbNの3次元マトリックス線路の作製に成功した。③3次元マトリックス線路を用いてバンドパスフィルタを試作し、その耐電力を測定した。その結果、通常の線路で作製したフィルタよりも3.1dB耐電力が向上することを見出した。これは、分割型線路を用いたフィルタ、積層膜線路を用いたフィルタよりも耐電力が大きく、3次元マトリックス線路の有効性を実証したものである。 以上の結果、平成24年度の成果で、本プロジェクトの目標をクリアしたことが分かった。
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