研究概要 |
本課題は,細胞への電気効果を利用した細胞活性測定システムで,従来のセンサでは達成できない非侵襲で個々の細胞の生死状態を迅速に測定するシステムを開発した.今年度は交流電界印加により細胞を配向させる透明電極を試作して測定原理及び電極構造や測定条件などを検討し,顕微鏡下で細胞の向きを判別することで細胞の生死判定を可能にした. 食品製造や医薬品製造の発酵プロセスにおける効率的な生産には,微生物細胞の生死状態を把握することが非常に重要である.現在,生死測定方法として染色法やコロニー計数法があるが,細胞毒性や生育時間などの問題がある.また,安全で短時間な電気的手法としてインピータンスや誘電率を測定する方法などもあるが,これらは特殊な微細加工電極や高価な測定装置が必要である.そこで提案者が従来から行っている交流電界中の細胞の配向現象を利用して,今回顕微鏡下で生死判定できる測定システムとして構築した.本測定法の特徴は従来の吸光度や誘電率などを直接測定するものではなく,電界印加による細胞の誘電的異方性に基づく方向変化を光学的に検出するという原理である.この電界配向が生細胞と死細胞で異なることを利用し,新たなアプローチで測定を可能にした. 具体的には,細胞の電界配向を顕微鏡下で測定するために透明電極と電圧印加・記録測定システムの設計製作を行った.ここでは非球形細胞の分裂酵母菌を使用して判定するための条件等の知見を得て,電界配向をリアルタイムで測定できる条件を調べ,生死細胞を判定できる周波数を同定した.
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