窒化物半導体トランジスタの高温安定動作を実現するため、H22年度は以下の2点について検討した。まずプロセス技術に関して、良好なGaN-MIS界面を得るための絶縁膜形成として、原子層堆積法(ALD)を用いたAl_2O_3膜の成膜技術を検討した。成膜においては成膜温度をパラメータとし、また成膜前のGaN試料の前処理として(NH_4)_2Sを用いた前処理を検討した。その結果、界面準位密度の低減にはAl_2O_3を250℃で成膜した試料が最も良好であり、さらに(NH_4)_2S処理の追加により明らかな界面準位の低減が確認された。GaNのキャリア濃度については、8E16から2E17cm^<-3>まで大きな変化は見られなかった。今後はAlGaN上の検討を含めて評価継続する予定である。一方、高温デバイス評価については、ショットキー障壁ゲート構造のAlGaN/GaN HEMTについて、室温から300℃までの高周波Sパラメータ評価を実施し、高周波特性の温度依存性を支配する電子輸送パラメータについて検討した。高周波特性(電流利得遮断周波数fT)の温度依存性は印加するドレインバイアス電圧に依存し、検討した5Vから20Vに亘って緩やかにfTが減少することが確認された。この結果は、高電界電子速度の高温での温度依存性が電子移動度の温度依存性より小さいことを示しており、窒化物半導体トランジスタの高電圧・高温動作の優位性の一端を示す結果であることを示すことができた。
|