研究課題/領域番号 |
22560328
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
岡田 浩 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 准教授 (30324495)
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キーワード | AlGaN/GaN / 発光デバイス / 希土類元素 / イオン注入 / 2次元電子ガス |
研究概要 |
研究2年目の本年度は、本研究の特色であるイオン注入法による希土類元素添加に用いる半導体母材構造と、イオン注入条件の関連について、発光デバイスの高効率化、高安定化に向けた検討を行った。本研究が目指す、希土類元素を窒化物半導体などのワイドバンドギャップ半導体に添加した構造は、希土類元素の内殻準位間の遷移を利用した温度変化に対しても波長安定性を有する発光が得られ、工学的に有用な新しい発光素子が期待できる。本研究が目指す電流注入発光素子では、電極からの電流がイオン注入法により添加した希土類元素を効率的に励起し、発光を得ることが必要である。昨年度までの検討では、電子デバイスとして一般的に用いられているAlGaN/GaNの高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造を母材として用いてきたが、本年度では研究計画に挙げたAlGaN/GaN/AlGaNのダブルヘテロ構造について素子を作製し、その特性を調査した。また、イオン注入プロセスによる加工損傷の影響調査にむけて、GaN系HEMT構造へのプロトン照射や、Mgの共添加によるEu発光特性の改善などについても検討した。 ダブルヘテロ構造を用いた発光デバイス作製では、Euイオン注入後に明らかな高抵抗化が生じ、ダブルヘテロ構造の採用により、電流狭窄効果が得られることが示された。また、照射エネルギーの依存性からは、Eu注入量の深さ分布が浅くなる低加速エネルギーでは、極端な高抵抗化が生じ、Eu注入ピークがチャネル層になるような加速エネルギーを選択すること、注入量依存性からは、注入量増加とともにチャネルの高抵抗化が生じ、電流注入発光に不適切であることがわかった。窒化物半導体のHEMT構造プロトン照射実験から、ての材料系はイオン注入に対して高い耐性を示す一方、チャネルの高抵抗化はシートキャリアの減少よりはむしろ、電子移動度の減少によるものが主であることが示され、効率の良い発光素子に実現には、イオン注入ダメージの導入を抑えた注入条件およびプロセス条件を選択することが重要であることが示された。さらに、Mgを共添加した層において、Euからの効率の良い発光が得られることを実験的に示し、この系が工学的に有用な発光デバイス実現に期待できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期の計画で予定していたとおり、イオン注入条件や、プロセス条件についての検討を進め、さらに母材となる構造についても検討し、高効率デバイス実現のためのデバイス構造についても明らかになってきている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、提案している発光デバイスの応用を含めた検討を行う。応用には、初期の計画で提案しているように、ナノ構造デバイスへの適用のほか、光電子集積回路への応用を含め、提案しているデバイスが有する微小光源として他にない特質を生かしたシステムについて提案する。
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