研究課題/領域番号 |
22560329
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
龍頭 啓充 京都大学, 工学研究科, 助教 (20392178)
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研究分担者 |
高岡 義寛 京都大学, 工学研究科, 教授 (90135525)
竹内 光明 京都大学, 工学研究科, 助教 (10552656)
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キーワード | 液体クラスター / エタノール / アセトン / 照射損傷 / 半導体加工 |
研究概要 |
本研究は半導体産業をはじめとする産業分野において実用化可能な性能を持った液体クラスターイオンビームの生成を目的としている。例えばエタノールクラスターイオンビームはシリコン基板に対して極めて高いスパッタ率を持ち、しかも照射損傷量を低く抑えることができるためシリコン基板加工に有効であり、水クラスターイオンビームはシリコン基板表面への酸化層形成に有効であることが分かっている。これら多原子分子である液体をクラスター材料として用いた液体クラスターイオンビームを、実用化可能な強度で生成することを目指している。 23年度には、22年度に製作した液体容器を真空槽内に組み込み、22年度に製作したノズルを通して真空槽内にガスを噴射し、更新した真空排気装置の性能を確認した。液体容器内に封入した液体の温度を正確にモニターするために、液体容器中央に設けた管内にシース熱電対を追加した。ヒーターを用いて加熱することにより発生した蒸気の圧力を正確にモニターするために圧力トランスデューサを設置した。飛行時間(TOF)法を用いて、22年度に製作したコニカルノズル及び喉径、開き角、及びノズル長を変更して新たに製作したコニカルノズルを用いた際のクラスターサイズ分布測定を行い、エタノールクラスターが生成されることを確認した。 本研究で製作した液体容器及びノズルの接続部には樹脂製オーリングを使用していないため樹脂製オーリングを侵す材料をクラスター材料として使用することが可能になった。そこで、アセトンをクラスター材料として用いたアセトンクラスターの生成を試みた。その結果、ヘリウムサポートガスを使用せずにアセトンクラスターを生成することに成功した。高い化学反応性を有し、産業分野において広く用いられているアセトンを材料とした液体クラスターイオンビームは、高い応用可能性を示すことが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で製作した液体容器、金属製コニカルノズル及び更新した真空排気装置を用いて液体クラスターイオンビームの生成を確認した。 さらに、今回製作した液体容器及びノズルでは樹脂製オーリングを使用していないため、クラスター材料としてのアセトンの使用が可能になり、ヘリウムサポートガスを用いずにアセトンクラスターの生成に成功した。アセトンは高い化学反応性を有するため産業応用への高い可能性が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で製作した液体容器、ノズル及び更新した排気装置を用いて生成した液体クラスターイオンビームのビーム強度をさらに増強する必要がある。現在ビーム強度が十分でない理由について検討したい。軌道計算等による電極配置の最適化及びノズル、スキマーの最適化を行いビーム強度の増強を行いたい。さらに、今回生成に成功したアセトンクラスターのビーム特性及び基板表面に対する効果について調べ、産業応用につなげたい。
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