研究概要 |
本研究では、大容量光ファイバ通信システムにおける主要デバイスである電気光学変調素子(EO変調素子)において、変調信号を処理するためのマイクロ波回路を同一光学基板上に集積化・一体化することによって、変調素子を飛躍的に小型化・高機能化し、動作の安定化を図ることを目的としている。具体的には、EO結晶であるニオブ酸リチウム(LN)基板上へのマイクロ波回路の設計手法の確立し、LN基板上で変調電極とマイクロ波回路とを一体化するための技術課題を解決することによって、光SSB変調や光FM変調等の高度な光変調動作を可能とする非常に小型で高機能なEO変調素子の実現を目指している。 22年度は、まず始めに、LN基板の大きな誘電率異方性に対応するために、LN基板上に形成した線路の特性インピーダンスや等価誘電率などの重要な回路設計パラメータを、結晶工学軸に対する線路の角度をパラメータとして、実験的に評価した。その結果を用いて、EO光SSB変調で必要となる分配器と位相器を兼ねたマイクロ波回路である90°ハイブリッド回路(ブランチラインカップラ)のLN結晶上への設計を行った。実際に、0.5mm厚のx-cutおよびz-cutのLN基板を用いて,中心周波数10GHzのマイクロストリップ構造の90°ハイブリッド回路を試作・評価し、回路構造の最適化を行って、最終的に良好な特性を得た。また、180°ハイブリッド回路であるラットレース型分配器についても、LN基板上での設計を完了した。 試作・評価では、必要に応じて、情報通信研究機構の実験設備を借用し、研究の加速と経費の節約を行っている。また、研究成果は、国際会議、学会等で発表している。
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