本研究では、大容量光ファイバ通信システムにおける主要デバイスである電気光学変調素子(EO変調素子)において、変調信号を処理するためのマイクロ波回路を同一光学基板上に集積化・一体化することにより変調素子を飛躍的に小型化・高機能化し、動作の安定化を図ることを目的としている。具体的には、EO結晶であるニオブ酸リチウム(LN)基板上へのマイクロ波回路の設計手法の確立し、LN基板上で変調電極とマイクロ波回路とを一体化するための技術課題を解決することによって、光SSB変調や光FM変調等の高度な光変調動作を可能とする非常に小型で高機能なEO変調素子の実現を目指している。 24年度は、90°ハイブリッド回路であるブランチラインカップラ(BC)をLN基板上に集積化した光SSB変調素子の試作評価を完了し、良好な光変調性能を確認した。また、本光SSB変調素子の性能向上の試みとして、メタマテリアル構造を利用したBCの小型の検討を行った。その結果、BC部分の専有面積を約1/3に小型化することに成功し、実際に、これを集積化した光SSB変調素子の試作・評価を行い、良好な結果を得た。また、未発表の結果ではあるが、180°ハイブリッド回路であるラットレース回路の集積化による光強度変調素子の高効率化の検討を行い、実験によりその効果を実証した。さらに、この変調素子を光コム発生器へ応用することも検討し、その可能性を理論的に実証できた。 これらの結果は当初目標をほぼ達成するものであり、学術的成果は、国際会議、研究会、学会等で発表し、海外学術論文誌にも投稿済みである。また、研究費の用途に関しては、実験に必要な物品は23年度以前の研究費によって概ね購入できたので、24年度は共同研究先である情報通信研究機構の実験設備を借用し、素子の試作・評価を行った。その結果、研究費の大部分は情報通信研究機構への旅費に使用した。
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