研究課題/領域番号 |
22560342
|
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
疋田 光孝 工学院大学, グローバルエンジニアリング学部, 教授 (00407157)
|
キーワード | センサ / センサネットワーク / 弾性表面波 / 弾性表面波センサ / ガスセンサ / ZigBee |
研究概要 |
前年度は、弾性表面波センサのダイナミックレンジの拡大と遅延線型弾性表面波センサの自己温度補償機能の実現が基本的に可能なことを示した。しかし、遅延線型センサの伝搬損失は20dB以上と非常に大きく、極端な低消費電力化が必要なセンサネットワークのノードには適用出来ない。また、-40~80℃で動作するガレージ内使用等では、自己温度補償機能は必須である。平成23年度の研究では、新たに弾性表面波共振器を組み合わせた低損失遅延線型センサを提案し、基礎実験により基本的に低損失化が可能なことを示した。また、同様に自己温度補償機能の実現の可能性があるも分かった。弾性表面波は通常の波動現象と同様に、λo/2をピッチとする周期構造ではブラックの反射条件が満たされ伝搬方向が逆転する。Alトランスデューサと同一金属材料で周期的なグレーティング反射器を左右に形成すると、波は反射器で折り返され一種の共振器となる。トランスデューサと反射器間がPとP-λo/4の共振器を考える(インピーダンスZ1、Z2)。Im(Z1)はインピーダンスがほぼゼロの共振周波数とほぼ∞の反共振周波数を交互に繰り返す。一方、Im(Z2)には同様の繰り返しが生じるが、トランスデューサと反射器間にλo/4の違いがあるため、Im(Z2)の共振周波数はIm(Z1)の反共振周波数と一致し、反共振周波数は共振周波数と一致する。Z1、Z2をラチス回路に組むと、Z1の共振周波数ではほぼゼロに対して、Z2はほぼ∞となるため、入力信号はZ1を通り出力へ現れる。逆にZ1の反共振周波数ではほぼ∞で、Z2はほぼゼロと成るため、入力信号はZ2を通り出力へ現れる。これは反射器の帯域内で繰り返され、結局入出力間では極めて損失の小さい遅延線特性が予想出来る。平成23年度は高度なシミュレーンにより、基本共振器を検討しそれ等を組み合わせた低損失遅延線の設計および試作を行った。基本評価の結果、低損失化の可能性を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に開発した遅延線型センサの伝搬損失は20dB以上と非常に大きく、極端な低消費電力化が必要なセンサネットワークのノードには適用出来ない。また、-40~80℃で動作するガレージ内使用等では、自己温度補償機能は必須である。平成23年度の研究では、新たに弾性表面波共振器を組み合わせた低損失遅延線型センサを提案し、基礎実験により低損失化の可能性を示した。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は前年度に可能性を確認した、本研究の基本である新型のセンサ用ラチス回路形低損失遅延線に関して、前年度に開発したシミュレーション手法を活用し詳細な設計、試作を行い、更にそれらの試作素子を評価する(特徴(i))。また、上記の低損失遅延線を組み合わせたセンサは、広い温度範囲で自己温度補償機能を有することを実験的に確認する(特徴(ii))。更にZigBeeの周波数の分周値に設定した周波数信号でセンシングが可能なことを示す(特徴(iii))。
|