研究課題/領域番号 |
22560344
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
上野 和良 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10433765)
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キーワード | デバイス設計・製造プロセス / 半導体超微細化 / 電子・電気材料 / 電子デバイス・機器 / 集積回路配線 |
研究概要 |
本研究の目的は、微細銅配線の課題となっている電子散乱効果による抵抗率の上昇を抑制するために、めっき銅膜の結晶粒成長を促進する新たな手法として、従来の熱によるアニールに加えて、表面クリーニング作用を持つ超臨界アニールと、電流ストレスによるエレクトロマイグレーション(EM)作用を持つEMアニールの可能性を明らかにすることである。 本年度は、超臨界アニールについて、銅めっきの際に添加する添加剤濃度を変化させることによって、銅めっき膜中の不純物量(主に炭素量)を変化させて、超臨界アニールと真空アニールの粒径比較を行った。その結果、まず添加剤の有無によって、アニール方法の違いに関わらず大きな粒径の差が観察され、添加剤がない場合に著しく粒径が小さくなった。超臨界アニールでは、真空アニールに比較して大きな粒径の割合が増加したが、この超臨界アニールの効果は、添加剤を加えた場合の中で添加剤濃度が低い場合に、より大きくなる傾向が見られた。 またEMアニールについても、銅めっき膜の添加剤濃度依存性を調べた。その結果、不純物濃度が少ない膜となる添加剤濃度ほど、EMアニールによる粒径の拡大や、電流方向に沿った成長促進効果(異方性粒成長)が大きくなる傾向が見られた。 以上の結果から、超臨界アニール、EMアニールともに、炭素などの膜中不純物量が少なく、粒成長しやすい銅めっき膜において効果が大きくなることがわかった。前年度までに得られたアニール温度、電流密度等のプロセス条件依存性の結果と合わせて、超臨界流体や電流ストレス(EM)の作用は、銅のマイグレーションが生じやすい条件において、より効果があると結論づけられる。従って、銅めっき膜の粒径拡大のためには、超臨界、EM等のマイグレーション促進のための駆動力とともに、銅めっき膜自体の不純物低減などの対策の重要性があらためて明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに超臨界アニール、EMアニールの粒径拡大の効果を最大化するプロセス条件や理由を、ほぼ明らかにできた。一方、銅めっき膜の粒径拡大の効果が超臨界アニールにより最大20%程度、EMアニールでは主に電流方向への成長促進であることから、微細銅配線での抵抗低減の効果検証に関して、微細配線試作の必要性を含めた検証方法の再検討が必要になっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、最終年度において、今までに効果を明らかにした新プロセスの応用検討として、(1)微細銅配線の低抵抗化への効果検証と、(2)他の電子材料への展開の可能性検証が課題である。(1)については、理論的な検討を含め、最適な検証方法を再検討し、抵抗低減への効果を検証する。(2)については、銅の次の配線材料として期待されるナノカーボン材料への応用可能性を検討する。
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