集積回路の微細配線には、抵抗が低く電流密度耐性が高いことから、めっきによる銅配線が用いられている。本研究の目的は、微細銅配線の課題となっている電子散乱効果による抵抗率上昇を抑制するため、めっき銅膜の結晶粒成長を促進する新たな手法として、従来の熱によるアニールに加えて、表面クリーニング作用を持つ超臨界アニールと、電流ストレスによるエレクトロマイグレーション(EM)作用を持つEMアニールの可能性を明らかにすることである。昨年度までに、超臨界アニールによる最大20%の粒径拡大効果や、EMアニールによる電流方向への粒成長促進効果を明らかにした。 本年度は、まずこれらの粒成長促進による配線抵抗の低減効果を見積もった。半導体技術ロードマップによる配線抵抗率上昇モデルによれば、配線幅50nm(32nm世代)において、粒界散乱の抵抗率上昇への寄与は25%程度と推定される。また配線幅に近い粒径では、粒界散乱がほぼ粒径に反比例することから、今回得られた20%の粒径拡大による配線抵抗低減への効果は最大5%程度と見積もられる。さらに抵抗を低減するためには、さらに粒径を拡大する必要があり、粒成長促進の効果が顕著な、めっき膜の不純物濃度低減が重要と考えられる。 本年度は、さらに新プロセスの新たな展開を図るため、電流ストレス印加を次世代配線材料として期待されるナノカーボン(NC)配線へ応用することを検討した。NC配線用のNC膜(多層グラフェン膜)堆積には、化学的気相成長法(CVD法)が適しているが、低抵抗NC配線を実現するためには、NC膜の結晶性向上が課題である。本研究では、電流を印加しながら熱CVDを行う装置を開発し、電流ストレス印加CVDによって、従来より結晶性の良いNC膜が得られることを示した。メカニズムの解明が今後の課題であるが、低抵抗化につながるNC膜の高品質化手法として期待できる。
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