研究概要 |
バンドギャップが広い半導体(ワイドバンドギャップ材料)は,電子親和力が小さいため電子に対する実効的な電位障壁高さ(実効仕事関数)が低く,低電界で電界電子放射が可能と期待されています.我々は炭素系ワイドバンドギャップ材料であるダイヤモンド等の低電界での電界電子放射が可能という特長を活かし,かつ電界放射電子源の製作プロセスの簡単化を検討してきました.我々はナノ粒子そのものを電界放射電子源として利用できると考え,電界放射を測定し,通常の電界放射電子源アレー(FEA)と同程度以上の性能を有することを明らかにしました.また,ナノ粒子を電子源に用いることより,製作コストの低減化に大きく寄与できるものと考えます.申請の研究では,ダイヤモンドのナノ粒子を用いた低コストで低電圧動作が可能な電界放射電子源の開発を目的としています. ダイヤモンド微粒子の表面状態と電子放射の関係を明らかにするために,基礎的な物性値の一つである放射電子に対する電位障壁高さ(実効仕事関数)を熱電子放射特性から詳しく調べました.ダイヤモンド微粒子の実効仕事関数は,通常の金属や半導体の仕事関数と比較すると非常に小さい値であることがわかりました.超高真空中での熱処理により,ダイヤモンド微粒子の仕事関数が変化し,電界放射特性に影響を与えることが確認できました.これより,最適な熱処理温度を見いだすことができ,電界放射特性の改善をはかる指針を得ました.さらに,実用化に向けて基盤と微粒子の密着法についても検討しました.その結果,現在は無電解メッキおよびシンタリングを用いて密着化について検討し実験を進めている段階にあります.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は(1)ダイヤモンド微粒子からの電界電子放射,(2)ダイヤモンド微粒子の基板への密着化,(3)微粒子とメッキ技術を用いて製作したダイヤモンドの電界放射電子源の評価,の三点を具体的な目標にしている.(1)については既に目的を達成し,(2)については,無電解メッキおよびシンタリングを用いて密着化を行う実験を進めている段階にあり,目的達成の確率は高いと考えます.よって,平成23年度終了段階ではおおむね順調に進展していると考えます,
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