研究概要 |
1.高速かつ高精度な電磁界時間応答解析法の開発 複素周波数領域の積分方程式法に数値逆ラプラス変換法を併用して,高速かつ高精度な電磁界時間応答解析法を開発した。本手法は,微小金属球の時間応答解析に対して所望の計算精度で厳密界と一致すること,Finite-Difference Time-Domain法と比較することで任意形状物体の解析にも適用可能なことを明らかにした。また,並列計算に大変優れた手法であり,使用する計算機の台数に関わらず並列化効率はほぼ100パーセントとなる。積分方程式法に多重レベルの高速多重極展開法を適用し,並列計算を併用することで,従来に比べて100倍以上の高速化を実現した。本手法を用いて設計したアパチャー型のナノアンテナは,アンテナ中心部において電界強度が増強され,局所的な円偏光が生成できることを電磁界シミュレーションにより確認した。 2.超高速・超高密度磁気記録システムの提案 現行の磁気記録速度の100,000倍,記録密度は2Tbit/inch2以上を実現できる超高速・超高密度磁気記録システムを提案した。高速化には書き込みに円偏光を用いる光直接記録を,高密度化にはナノアンテナにより生成された局所的な円偏光と粒子状の記録媒体を用いる。ナノアンテナは,アンテナ下部にビークを付け,記録を行う粒子にのみ大きな電界強度が得られる構造とした。粒子状の記録媒体は,密度が2Tbit/inch2を越える粒子サイズと配置を選んだ。提案したシステムでは,記録を行う粒子のみに局所的な円偏光が生成され,隣接粒子との電界強度比が2倍強となることを電磁界シミュレーションにより明らかにした。また,数値結果の検証を試みるために,ナノアンテナの試作および実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度開発した電磁界時間応答解析法は,多重レベルの高速多重極展開法と並列計算を併用して,従来法に比べて100倍以上高速なシミュレーションが可能となった。提案手法により,アパチャー型のナノアンテナの設計を行い,アンテナ中心部において電界強度の高い局所的な円偏光が生成出来ることも確認した。併せて,現行の磁気記録速度の100,000倍,記録密度は2Tbit/inch2以上を実現可能な磁気記録システムの提案を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2Tbit/inch2を越える超高密度磁気記録において安定なシステムを実現するためには,記録を行う粒子のみに局所的な円偏光を生成し,隣接粒子との電界強度比を大きくすることが最重要課題である。今年度実現した2倍強の電界強度比を更に大きくするため,粒子媒体のサイズおよび配置,局所的円偏光を発生するアンテナ形状の最適化などを引き続き検討する。また,光直接方式における記録時間の更なる短縮を目標に,記録媒体中に局所的円偏光が作られる過渡状態の解明,粒子媒体と光の相互作用および記録プロセス等を電磁界シミュレーションにより検討する。 シミュレーション結果の検証を試みるため,アパチャー型のナノアンテナの試作および実験を開始した。今年度に引き続き,シミュレーションと実験間で相互に迅速なフィードバックを実現できる手法の確立を目指す。
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