研究概要 |
初年度に単結晶ヘテロ接合を利用したZn0/ZnMgO HFETの高周波特性を評価し,電流利得の遮断周波数が1.75GHzとギガヘルツ動作が得られることを明らかにした。この値は,静特性を評価して得られる,伝達コンダクタンスおよび素子形状から算出されるゲート容量から求めた値によく一致していることを確認した。したがって,高い高周波特性を実現するためには,高い伝達コンダクタンスを得ることが重要であることが分かる。 そこで,今年度は,単結晶薄膜ではなく,実用性の高いマグネトロンスパッタ法により成膜したinZnO薄膜(In添加量が10wt%)をチャネル層としたTFTを作製し,熱処理条件(雰囲気,温度,時間)を検討することで,HFET構造に近い特性が得られることが分かった。さらに,素子構造にも検討を加え,HFETに匹敵する性能を実現することに成功した。 さらに,溶液法のひとつである,ゾルゲル法を使ったTFTの高性能化にも取り組み,チャネル層の伝導度を上げ,伝達コンダクタンスの増大を図り,インジウム添加の検討を行った。さらに焼結時間の検討も行った。インジウム濃度を5%,10%と増加させることで薄膜の抵抗値が大幅に低下することに伴い,伝達コンダクタンスが大幅に改善し,インジウムを添加しないものに比べて,2桁程度の改善が得られ,他の方法で作製されたTFTに遜色のない特性が得られることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発した,マグネトロンスパッタ法,ゾルゲル法によるTFTのさらなる高性能化を進めるとともに,静特性だけではなく,高周波特性を評価し,ギガヘルツ動作の検証を行う。
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