サファイア基板上に分子線結晶成長法で成膜した単結晶ZnO/ZnMgOヘテロ接合を利用して作製したギガヘルツ領域に遮断周波数をもつトランジスタは,ゲート長 1 um で,伝達コンダクタンスが数十 mS/mm であった.この静特性から予測される遮断周波数が,高周波特性を測定して得た遮断周波数の実測値に一致することから,トランジスタの高周波特性を評価することなく,静特性だけを評価して,高周波特性を推定することができる. そこで,今年度はスパッタ法やレーザアブレーション法でガラスやプラスチック基板上に形成した酸化亜鉛系薄膜をチャネルとしたトランジスタを作製し,その静特性を評価することによって,高周波特性を推定することを試みた. スパッタ法やレーザアブレーション法を使って作製した酸化亜鉛トランジスタは,上記の単結晶へテロ接合を用いたトランジスタとは異なり,ガラスやプラスチック基板上に基板加熱を行うことなく成膜できることが大きな特長である.素子構造をバックゲート型にするための,プロセス検討を行いトランジスタを作製した.その結果,作製した素子は,単結晶へテロ構造を利用した素子と同程度以上の静特性を有することを示すことがわかった.したがって,これらのトランジスタもギガヘルツ領域に遮断周波数を持つものと考えられる.この結果は,酸化亜鉛トランジスタの高速性を示す,非常に重要な結果である.酸化亜鉛をはじめとする酸化物半導体は,プラスチックなどのフレキシブル基板上にも形成することができるため,そのような基板上にも非常に高性能なトランジスタを形成できることが明らかになったことは,今後のデバイス応用上非常に重要な知見が得られたと結論することができる。
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