本研究の目的は、周波数利用が錯綜している昨今、その開発が期待されているミリ波電磁波帯、更には電波と光波の谷間でその利用技術の確立が興味深いテラヘルツ波電磁波帯において、従来のプリント伝送線路に比べて格段に伝送損失が低減され、しかもこのような超高周波帯電磁波利用促進を妨げる大きな要因である「回路の高価格化」を解消した、低価格で提供されうる新たなプリント伝送線路を創出することにあり、まず本研究を開始する前に、使用する低価格FR-4基板の誘電定数、及びFR-4基板に蒸着された銅箔の、表面及び裏面の実効導電率を、60GHz帯で精密に測定した。その結果、これまで計測されたことが無かった裏面の実効導電率は、標準値と比べて90%以上劣化することを明らかにした。次にFR-4基板で構成した60GHz帯両面金属装荷トリプレート伝送線路の線路寸法を、理論的に決定し、そのデータをもとに帯域通過フィルタを試作した結果、挿入損失1dB以下と、これまで実現し得なかった低損失プリント線路フィルタが、低価格ではあるが極めて劣悪なミリ波特性のFR-4基板を用いても実現できることを実証した。
|