研究課題
全体として,当初の目的である「アナログ複素信号処理を行うために必要な要素回路ブロック(OTA,4相複素フィルタだけでなく3相増幅器,3相複素フィルタ等)の回路実現法を研究し,実際にLSIとして試作実証まで行う」ことはほぼ予定通り達成できた.今年度は,前年度に設計・試作したLSI(A)0.5V動作全差動OTA,(B)1V動作する3相能動複素フィルタ,(C)可変4相RCポリフェーズフィルタの測定・評価を行った.設計・試作は全て0.18um CMOSプロセスで行った.(A)に関して:電源電圧0.5Vの全域にわたる同相入力範囲を有する全差動OTAを実現するため,要素回路としてバックゲート入力型CMOSインバータを用いる設計を採用し,試作チップを評価した結果,ほぼ設計どおりの特性が得られた.電源電圧の全範囲を同相入力範囲とするOTAでは0.5V動作は,現状におけるチャンピオンデータと思われる.(B)に関して:当初,3相増幅器を用いて実現する予定であったが,回路構成の工夫により,単相の増幅器でも零相抑圧効果を有する回路が構成可能であることがわかり,最も単純な3段縦続のCMOSインバータで3相複素能動フィルタを設計・試作した.評価の結果,ほぼ設計どおりの特性が得られ,消費電力を当初案の1/4以下に低減できた.(C)に関して:抵抗と容量を同時に可変する方式を提案し,これに基づいた設計・試作を行った.また,可変・非可変に関わらず,従来からRCポリフェーズフィルタで問題となっていた寄生容量による高域における利得低下をキャンセルする回路を発案し,設計・試作した.評価の結果,可変機能は確認できたが,本体以外の測定用に組み込んだ回路の性能不足で,高域の利得低下キャンセルの効果は確認できたものの十分に実証できなかった.この他,RCポリフェーズフィルタの厳密設計手法に関する総説的論文を発表した.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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IEICE Trans. on Fundamentals
巻: Vol.E96-A, No.2 ページ: 402-414
DOI:10.1587/transfun.E96.A.402