研究課題/領域番号 |
22560359
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川原崎 雅敏 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (70375517)
|
研究分担者 |
佐藤 聡 筑波大学, システム情報系, 講師 (90285429)
|
キーワード | P2P / 物理網(ISP網) / パス選択 / 利用可能帯域推定 / TCPウィンドーサイズ / BGPパス情報 |
研究概要 |
P2Pトラピックが物理網(ISP網)に必要以上の負荷をかけている問題に対し、ピアがファイルをダウンロードする際に、物理網的に近いピアや経路状態が良いピアをダウンロード元に選択する方式について検討を進めた。 22年度は、ピア間でプローブパケットを転送し、RTTで物理網的な近さを、TCPウィンドーサイズで利用可能帯域の大きさを推定する手法について、大規模網モデルによるシミュレーションで検討した。その結果、RTT方式は一定の効果を示したが、ウィンドーサイズ方式はピア選択には有効であるものの計測負荷が過大になって物理網を圧迫することが判明した。そこで、23年度は少ない計測負荷で利用可能帯域を推定する方式として、パケットペアによるアクティブ測定を用いる方式、およびウィンドーサイズの計測方法を改良して計測負荷を減らす方式について検討した。シミュレーション実験の結果、パケットペア方式は負荷レベルが高くなると推定誤差が増大したが、改良したウィンドーサイズ方式は有効な制御方式になることが判明した(ICUMT2011国際会議で報告)。 さらに、物理網的な近さとして、経由するAS数が最小となるピアを選択する方式についても検討を行った。これには、BGPパス情報を利用することとしたが、エンド端末からはBGP情報を得ることができないため、筑波大学キャンパスネットワークのゲートウェイルータにパス情報を取得する機能を実装して実験を行った。その結果、BGPパス情報は有用であるものの、一部のISPはパス情報を縮退させており完全なパス情報が得られないケースが発生した。この問題は引き続き検討する。 上記以外に、物理網リソースの利用効率を高める方式として、最短経路のほかに迂回経路を用いて負荷を分散させる方式についても検討し、UNET2012国際会議に採録された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の研究期間の2年目までに当初予定していた研究計画は一通り実行した。しかし、予期していなかった課題も出てきており、さらに詰める必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
ファイル取得候補ピアの経路の利用可能帯域を推定するに当って、計測精度と計測負荷量のトレードオフ関係を分析し、最適な計測・推定方法について更に検討を進める。また、提案した物理網を圧迫しない最適なピア選択方式について、シミュレーション実験だけでなく、PlanetLabを用いた実網実験での評価を試みる。このため、筑波大学学術情報メディアセンタと協力して環境整備を進める。完全なBGPパス情報が得られない問題に対しては、代替方式を検討する。
|