研究概要 |
本研究における第一の目的は,「画像信号ははたしてどこまで圧縮できるか?」というきわめて挑戦的な課題にチャレンジし,その理論的圧縮限界を達成するための符号化方式を明らかにしようとするものである。さらに,第一の目的で得られた知見に基づき,超高精細動画像信号に対して,非可逆符号化から可逆符号化までをシームレスな単一符号化方式でスケーラブル伝送を可能とする高圧縮符号化方式を開発することを第二の目的としている。 本年度は,まず,理論的圧縮限界を達成することが期待できるマルコフモデル符号化を取り上げ,その効率化について検討した.本研究申請者らが提案している3次元マルコフモデル符号化は,多値画像をビットプレーン分解した各成分単位で扱い,着目エレメントと相関の高いエレメントを参照する手法であるが,本研究では,カラー画像を構成する成分画像間の相関を用いる手法を提案し,シミュレーションを行い良好な結果を得た.次に,マルコフモデル符号化に親和性のあるエントロピー符号化方式として,算術符号化を取り上げ,符号化及び復号の高速化方式を開発した.提案方式は,符号化対象情報源の拡大により,符号化対象シンボルを複数まとめて符号化することとし,さらに確率値の事前計算を用いて,演算回数を削減することにより,2値算術符号の高速化を図る方式である.シミュレーションの結果,符号化処理においては従来方式よりも2倍程度高速化が図れることを明らかにした.今後は,これらの結果をもとに,各要素技術を効果的に組合せて超高精細動画像信号の可逆圧縮方式の確立を図るとともに,シミュレーションを通じて,より効率的な方式の開発を行う予定である.
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