本研究は、光ファイバ通信において多波長帯利用による大容量化に関するものであり、特に近年研究が活発化している振幅位相変調(APSK)方式を対象とする。光ファイバ非線形効果の中でも劣化の主要因となる、自己/相互位相変調効果による当該方式の受ける伝送特性劣化を簡易に精度よく定量評価する方法を開発することを主な目的とする。また、受信方式としては、直接検波及びコヒーレント検波の両方を対象とする。 信号の振幅変動及び位相変動によって生じる自己/相互位相変調効果を考えなければならない。さらに自己/相互位相変調効果による影響は、位相変動分だけでなく、強度変動分もあるため、これらも同時に考慮に入れていかなければならない。注意が必要であるのは、APSK方式では2種類以上の大きさの振幅を用いるため、振幅変化の影響は単純ではなく、強度変調方式やDPSK方式の検討結果を単純に組み合わせただけでは達成できないと予想される。このため、波形劣化に至る過程を詳細に調査する必要がある。 上記のような観点から以下の項目に示したような結果が得られた。 ● 自己/相互位相変調効果の影響を、強度変動分及び位相変動分として導出できる近似法の検討や自己位相変調効果の影響を表現する手法の開発に着手したが、まだ十分な精度が得られなかった。来年度以降も継続していく予定である。 また、シミュレーションにおける逐次計算を省けるような近似を考案し、シミュレーションに比べ、計算時間を1/20程度にすることが可能となった。 ● SSF法で計算した伝送後の波形を入力とし、光/電気フィルタの影響を考慮に入れた、コヒーレント検波した場合の誤り率計算法が明らかになってきた。
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