研究課題
本研究課題では昨年度までに,通信路分極のより精密な解析にもとづく漸近的性能評価の改善,ならびにArikanが通信路分極とポーラ符号を最初に提案した際に用いたバイナリ2×2のカーネル行列にもとづくポーラ符号の構成法の拡張について検討してきた.今年度は,通信路分極の解析をさらに進め,非バイナリのシンボルを使う一般的な場合も含めた理論構築を行い,復号誤り率の漸近的評価に関する理論的枠組みを完成させることを主な目的として研究を行った.一般に,l×lのカーネル行列にもとづいてポーラ符号を構成する場合には,通信路分極で得られる符号長と同数の仮想的な通信路のうちでノイズが小さいものを選択し情報伝送に使用する.どの通信路を選択すべきかは実際に通信に用いる通信路に依存するが,本研究課題では通信路分極の過程の詳細な検討により,選択されるべき仮想的通信路は,その添字をl進展開したときに漸近的にはほとんどの桁は実際に通信に用いる通信路によらずに決まることを明らかにした.非バイナリのシンボルを使う場合の通信路分極の理論について検討をさらに進めた.具体的には,pを素数として一般に大きさqがpのべきである有限体の要素をシンボルとして使う場合に,通信路分極が生じるためにカーネル行列が満たすべき条件を議論した.同一の通信路分極を与えるカーネル行列の変換を導入してカーネル行列の標準形を定義し,単位行列と異なる標準形をもつ可逆なカーネル行列に対し,その非対角要素を基礎体F_pに付加して得られる拡大体がF_qに一致することが,通信路分極が生じるための必要十分条件であることを明らかにした.また,符号化率に依存する形での漸近的性能評価を,有限体の要素をシンボルとして使う場合に拡張した.これまでの研究成果の一部をまとめた論文が,査読を経て2013年4月に雑誌に掲載された.今年度は,さらに一篇の論文を投稿した.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
IEEE Transactions on Information Theory
巻: volume 59, issue 4 ページ: 2267-2276
doi: 10.1109/TIT.2012.2228295