・認証性能の改良 データベースを用いた認証性能の評価から得られる知見を生かし,特に特徴抽出法に関する改良を行った.具体的には,1)手のひら伝搬スペクトルの各周波数成分の分散を調査し,個人内変動が小さく,個人間変動が大きな成分が存在することを見いだした.また,それらの周波数だけを用いることで,等誤り率が約4%改善できることを見いだした.2)多変量解析法の一つである主成分分析を導入することで,等誤り率を数%改善しつつ,特徴数は大幅(1/10程)に削減できることを見いだした.これらの結果より,手のひら伝搬信号において,照合に適した周波数成分が存在し,それらだけを用いることで照合率が改善できることが確認できた.これまでは,白色信号を伝搬信号として用いてきたが,短時間での測定では,白色性が実現されず,スペクトル成分の変動が照合率を劣化させていたと考える.今後は,照合に適した周波数成分だけを含むひずみ波(複合正弦波)を伝搬信号とすることで,スペクトル成分の変動を抑圧でき,さらには位相成分を特徴量に用いることも期待できる. ・認証LSIとスタンドアロン型認証システムの開発 特徴抽出処理と照合処理の部分(認証エンジン)をLSI化するため,汎用のFPGAボードを購入したが,認証性能の改良に手間取り,認証エンジンの実装を試みるまでには至らなかった.同様に認証LSI(FPGA)を核とし,信号発生器(DA変換器),検出器(AD変換器)等の周辺機器を含めてスタンドアロンで動作する認証システムを開発する予定であったが,こちらの方は着手するには至らなかった.
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