研究概要 |
情報ハイディングでは何らかの情報を別なデータに埋め込み、情報の多重化を行う。このときカバーとなるデータは埋め込みにより劣化する。この劣化した情報を、埋め込み前の状態に戻すことができる情報ハイディングを、可逆的情報ハイディングと呼ぶ。本研究の目的は、可逆的情報ハイディングを利用して安全、便利なQRコードシステムを開発することにある。本年度は二値画像に対する可逆的情報ハイディング技術を開発し、その可逆的情報ハイディング技術を評価するステガナリシスについても検討した。0,1を画素値とする二値画像には大きく二つのタイプがある:1)前景と背景がそれぞれ,0,1に対応するような二値画像,2)擬似階調表現のディザ画像である。これらの画像に対して提案手法がどのような性質を持つのか、大量の二値画像を利用して実験的に調べた。その結果、ディザ画像に対しては大量のデータ埋め込みが可能で、視覚的に見劣りしないことが分かった。次に、ブロックサイズ,しきい値、近傍ビットパターンを変化させた場合の埋め込み性能について大量の二値画像を利用して実験的に調べた。その結果、4x4ブロックサイズの場合が、1)および2)の二値画像すべてに対して良好な結果を得ることができた。また近傍ビットパターンの選択は、2)の画像に対しては埋め込み性能に影響を与えるが、1)の二値画像に対しては、ほとんど影響を与えないことが分かった。情報ハイディングの評価尺度の一つにステガナリシスへの耐性がある。提案する可逆的情報ハイディングを多方面から検証するため、画像データのスパース表現を利用したステガナリシスについても検討し、濃淡画像に対しては従来手法よりも良好な性能を得ることまでは確認できた。
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