研究概要 |
QRコードへの情報重畳の一つ具体的な目的として改ざん検出を設定した.以下では,QRコードが表現する情報(URL)を「裏の情報」と呼び,QRコードを構成する白黒二値パターンを「表の情報」と呼ぶ.裏の情報からハッシュ値を計算し,表の情報に埋め込み,改ざん検出可能なQRコードを生成する. そのQRコードから裏の情報を抽出し,ハッシュ値を計算する.その後,表の情報から埋め込まれたハッシュ値を抽出し,計算されたハッシュ値と比較すれば,改ざん検出が実現できる. 裏の情報のハッシュ値はWet Paper符号を利用して表の情報に埋め込む.Wet Paper符号とは,誤り訂正符号のシンドローム計算の考え方を利用した,もともとのバイナリ系列をできるだけ変化させないようにメッセージを埋め込む方式である.このWet Paper符号による表の情報の変化が,誤り訂正符号で許容される誤り内であれば,裏の情報を正しく復号化でき,さらに表の情報から埋め込んだ情報も抽出できる.なおセキュリティを考慮し,ハッシュ値はRSAで暗号化しておく. Wet Paper符号では,ある長さのバイナリ系列に対して埋め込みが行われる.提案手法では,この長さ(pと標記する)により埋め込みの可否が決定される.これを実験により検証した.型番10のQRコード,1024ビットのRSA公開鍵暗号を仮定する.QRコードの誤り訂正可能なエラー率はL(7%), M(15%), Q(25%), H(30%)である.p=12の時は最大変化割合が30%を越えているので,安定的な裏の情報の復元は不可能である.一方p=16およびp=20の場合は,最大変化割合が30%を下回っており,復元レベルHにて裏の情報の復元は可能である.さらにp=24では,最大変化割合が25%を下回っており,復元レベルQにて正常にメッセージを読み出すことができる.
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