研究概要 |
本研究は,人体の近傍を電磁波の伝搬路として用いる無線通信であるWBAN(Wireless Body Area Network)に使用するための高性能な無線端末(ウェアラブルデバイス)の実現を目指して,無限長誘電体円柱による散乱電界の厳密解を用いる解析的な手法によって電波伝搬特性を求め,さらに符号誤り率(BER)シミュレーションを行ったものである.まず,人体の腕を無限長誘電体円柱で近似し,その近傍に送信用と受信用として2つのダイポールアンテナを配置した.次に,入射電界として送信ダイポールアンテナからの放射界を求め,解析的に求めた無限長誘電体円柱による散乱電界をそれに加えることによって円柱近傍の全電界を導出した.また,送信アンテナへの入力電圧と受信アンテナに生じる受信電圧との比から複素数で伝達係数を求めた.さらに,WBANに使用するための周波数として,402~405MHzのMICS(Medical Implant Communication Service)バンド,900~928MHzの900MHz帯ISM(Industrial Science Medical)バンド,および3.1~10.6GHzのUWB(Ultra Wide Band)バンドの3種類の周波数帯域を取り上げ,変調方式としてMICSとISMバンドについてはBPSK,QPSK,OFDMをUWBバンドについてはUWB-IRとMB-OFDMを用いた場合についてBERシミュレーションを行った.その結果として,人体が存在することによるBERの改善効果は周波数が低い方が高く,検討した周波数帯中ではMICSバンドが最も良くなった,しかしながら,波長に対してアンテナが極めて小さいため,アンテナの利得が問題となることが分かった.また,検討した変調方式の中では,OFDM方式は人体による影響が少ないことを明らかにした
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