研究概要 |
本研究課題の目的は,光加入者網を全光処理による多元接続で構成可能な光CDMA方式において,異なるチップレートの符号が混在する場合であっても直交性を維持できる新しい光直交符号を研究・開発し,光加入者網における高セキュリティ化と経済化を実現することである. 平成23年度は,計算機を用いたランダム符号探索や符号語数の上界式,パルス密度に基づいたビット誤り率特性と畳み込みによる厳密なビット誤り率特性の導出について検討を深めた上で,符号構成法の検討に注力した. 計算機探索ではないalgebraicな符号構成法としてBIBD(Balanced Incomplete Block Design)系列に着目した.BIBD系列は,拡大体に基づく系列であり,最適な等チップレートの光直交符号の設計を瞬時に完了させることができる.異なるチップレートが混在する場合に拡張するため,二つのアプローチを検討した.一つは,複数のBIBD系列から最適な組み合わせを選択する手法であり,もう一つは,遅いチップレートから順に階層的に設計する手法である.検討の結果,階層的手法の方が高効率であり,多くの符号語数が得られることがわかった.また,パルス間隔分布の非対称性による設計時の諸問題を明らかにした. 更に,パルス間隔分布の自由度の拡大の観点で,階層化手法による符号設計について検討した.低速チップレートの符号語数が多いと,高速チップレートの符号の設計の自由度が小さくなり,トレードオフの関係がある.最適な光直交符号を構成するBIBDパラメータを計算機探索で列挙し,符号の設計効率を示すことで,自由度の拡大に適した具体的なパラメータを見出した.また,符号重みが偶数の方が,奇数の場合よりも高効率であることを確認した.符号長が長いほど自由度の拡大に対する低速チップレートの符号語数の減少を小さく抑えられることがわかった.
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