研究概要 |
高効率の無線通信を達成するには,送受信機において複数のアンテナ素子によるMIMO伝送を用いることが必要である.MIMO伝送では,送信機側で異なるM本のアンテナを用いて異なるM個のデータを同時に送信する.受信アンテナはM本の送信アンテナからの信号をそれぞれ同時に受信し,M個の受信データを信号処理によって分離する.これにより通常のM倍の伝送速度を達成する.MIMO伝送の問題点は複数のアンテナを小型端末に搭載する必要があることである. 本研究では分数間隔サンプリング方式を適用し,1受信アンテナ素子でMIMO伝送を実現する.2011年度は誤り訂正符号を組み合わせることにより,ナイキストレートでサンプリングした受信信号でも1受信アンテナで信号分離が可能であることを示した.その例として独立にHamming符号およびトレリス符号化変調を用いた信号を空間多重し,受信側で分離するアルゴリズムを計算機シミュレーションおよび理論計算により実証した.したがって受信側端末のフォームファクタに依存することなく,スループットが受信側信号処理量にのみ依存することになる. ただしこのアルゴリズムは信号処理の複雑さが分離する信号ストリーム数乗で指数関数的に増加することが欠点である.2信号ストリーム程度で実用上限界である.そこで復調誤り率特性を劣化させることなく低計算量で信号を分離する方法を検討することが今後の課題となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初設定した研究課題のうち・受信信号同期法,・受信号復調のための信号処理,・提案方式に適した誤り訂正符号および復号法に関しては計算機シミュレーションにより評価済みである.また・異なるチャネルモデルに対する特性に関しては,計算機シミュレーションだけでなく伝搬実験を実施しより実際的な通信路における評価を行った.・送信信号の構成法および・周波数軸における割り当て法に関しては次年度(3年目)において提案し評価する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題・送信信号の構成法および・周波数軸における割り当て法は・提案方式に適した誤り訂正符号および復号法に密接に関連する.誤り訂正符号と組み合わせることによって受信側で分数間隔のサンプリング処理をせずとも通常のサンプリング間隔でも1受信アンテナでMIMO信号を分離することが可能であることがわかってきた.ただし現状では信号分離処理にかかる計算量が膨大であり,実用に適さない.今後送信信号の構成法と関連して,信号分離処理および復号処理を検討する予定である.同時に提案する方法が有効であることを示すため,実験を通して実証する.
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