現代社会におけるセキュリテイはその重要性を増しており、生体認証に関する研究が世界レベルで活性化している。手のひら認証、近赤外光を用いる静脈認証、指静脈によるものなどがある。 多くの生体認証技術のなかで静脈認証は比較的健全なものと評価されているが、他の手法と同様万能ではない。そもそも一般的にセキュリテイ分野はいたちごっこの側面を持ち,生体認証においても、新たな原理より取得した生体情報に基づく新たな方法を試みることは意味があると考えられる。 この研究では、人の手のひらから高スペクトル分解能の分光画像データ群を採取し、その性質を調べ、生体認証の可能性を探った。 使用装置から得られるデータは480 (spatial pixel) 321 (spatial pixel) x 640 (spectral pixel) からなり,スペクトル情報は波長396.37 - 990.64 nm 帯域を0.93 nm 刻みでカバーするので、これまで用いられてきた多くの装置から得られるデータとは異なり、(i)高分解能画像が(ii)大量に得られる。画像はスペクトル分解されているため、通常のRGBによるカメラ画像とは異なり、各波長毎の生体物質の分布を捉えることができる。したがってその分布の波長依存性も見ることができる。この装置は医療応用を目的としておりメラノーマ検出用に開発されたものであるが、今回の実験結果は、EER0.62%と比較的良好であり、生体認証にも応用可能であると思われる。
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