研究概要 |
本研究は,緊急時や災害時の通信として有望視されている,マルチホップ無線通信環境におけるデータの配信,収集のアルゴリズムを開発することを目的とし,そのため近年研究が進んでいるネットワークコーディングと呼ばれる技術を取り入れてモデル化し,データの配信アルゴリズムを開発するものである. 当該年度では,まずマルチホップ無線ネットワークの抽象的なモデルを作成した.ごく単純なモデルとして,グラフ理論における辺彩色問題に帰着できることが知られているが,このモデル化では,チャネル間の干渉が十分表現できない.これに対応した,従来の辺彩色により制限を持たせた強辺彩色と呼ばれる問題が提案されているが,条件が厳しすぎるため,チャネルを十分に有効活用できるとは限らない.そこで,辺彩色と強辺彩色の間に位置する彩色問題をモデルとして提案した.この問題における,単純な構造(主に閉路のない木状のグラフ)に関する理論的な成果は,23年度早々の国際会議にて発表予定である.今後,このモデルを用いて,実際のマルチホップ無線環境におけるデータの配信,収集のアルゴリズムを開発することになる.ここまでは,2つの端末間にチャネルを割当てるだけであったが,いくつもの端末を経由して通信するためには,スケジューリングが重要となり,ここにネットワークコーディングと呼ばれる技術を取り入れ,円滑にデータをやり取りすることを目指す.当該年度では,モデル化に時間がかかったため,当初の計画である通信アルゴリズムの開発が現在進行中であり,ここ数ヶ月でまとめる予定である.
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