研究概要 |
本研究は,緊急時や災害時の通信として有望視されている,マルチホップ無線通信環境におけるデータの配信,収集のアルゴリズムを開発することを目的とし, そのため近年研究が進んでいるネットワークコーディングと呼ばれる技術を取り入れてモデル化し,データの配信アルゴリズムを開発するものである. 昨年度までに,マルチホップ無線ネットワークの抽象的なモデルを作成し,単純な構造に関する理論的な成果を得るとともに,このモデルを用いた,マルチホップ無線環境におけるデータの配信,収集のアルゴリズムを開発した.また,ネットワークコーディングを単純なモデルを用いて,開発した発見的手法によるアルゴリズムの有効性を,コンピュータシミュレーションにより検証した. 昨年度までは,端末は固定されたものであったが,当該年度では,移動を伴うモデルにおいても適応可能なアルゴリズムを開発し,この場合もネットワークコーディングは有効な手法であることをシミュレーションにより確認した.しかしながら,通信が集中することで,特定の端末の電力消費が著しくなるケースが確認されたため,その対策を現在検討している. また,ごく単純な無線通信におけるチャネル割当に関するモデルは,グラフ理論における辺彩色問題に帰着できることが知られているが,このモデル化では,チャネル間の干渉が十分表現できなかった.昨年度までにチャネル間干渉をより的確に表現できる辺彩色問題を提案し,いくつかの理論的な結果を得た.当該年度では,よりチャネル間干渉を表現できるよう改良し,これまでの理論的な結果を拡張した.
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