研究概要 |
本研究課題では,心室細動のみでなく,心室頻拍などについても高精度で識別できるシステムの構築を目的とし,(1)心電図波形データの記録・収集とウェーブレット解析に基づく特徴抽出,(2)高精度識別システムの構築と検証,(3)心電図波形の状態遷移と患者(生体)の状態との関連性と評価方法の検討といった3点に絞って研究を進めている.本年度は,3ヵ年計画の第一段階にあたり,心電図波形データの収集,および分類作業,ウェーブレット変換に基づく心電図波形の特徴抽出作業を実施し,予定していた作業をすべて完了した.具体的な内容は,以下のとおり. (1)心電図波形データの収集,および分類 本研究では,AHAデータベース,MIT-BIHデータベース,ならびに杏林大学医学部付属病院高度救命救急センターに保存されているデータを解析対象として,心室細動,心室頻拍などの症例毎に整理・分類した.これは,特徴解析,および次年度以降に進める高精度識別システムの構築と検証にも重要なものである.ただし,記録されている波形データの数が非常に多く,また,目視でも判断のつきにくいものもあり,想定していた以上に時間を要した. (2)ウェーブレット変換に基づく心電図波形の特徴解析 (1)で整理分類した心電図波形データをウェーブレット変換を用いて解析し,特徴を整理した.その結果,心室細動では,最大エネルギーをもつ周波数成分が変動していることなど,各心電図波形の特徴が明らかとなってきた.また,今年度に明らかとなった特徴に基づき,心電図波形の識別についても検討した.その結果,ある程度の識別が可能となり,本研究で目的とする識別システムの準備が完了したといえる.ただし,精度(感度,特異度)の検証やより高い精度での識別を実現するため,更に詳細に特徴抽出を行っていくことも重要である.
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