研究概要 |
昨年度に引き続き,メタヒューリスティクスの持つアナロジーに立脚するのではなく,最適化手法としての基本構造,すなわち移動戦略における(1)探索履歴情報の時間的・空間的広がりと変換・活用戦略,(2)探索点間の相互作用と生成される探索のダイナミクス,を近接最適性原理の観点から統一的に解析することで,メタヒューリスティクスの汎用設計論を構築し,これに基づく新たな連続・離散型メタヒューリスティクスの開発と性能評価を行うことを目的として,研究を継続した。平成23年度における主な研究成果は以下の通りである。 (1)集中化とは短期的な解の改善を目標として解空間の局所的な探索を行う戦略であり,多様化とは長期的な解の改善を目標として解空間の大域的な探索を行う戦略である。本研究では,解空間における局所的最小解を,局探索により決定される引き込み領域の代表点と位置づけ,この局所的最適解の空間での新たな最適化手法の開発を行なった。具体的には,長期的方針を有する集中化・多様化の実現を目的とし,従来の探索点間の移動戦略ではなく,局所的最適解が持つ引込み領域間の移動戦略を新たに提案した。最後にベンチマーク問題を用いて提案手法の性能を検証した。 (2)近接最適性原理(POP)をより具体的かつ有効に活用するため,漠然とした概念であるPOPを距離および部品の観点から定量的に評価を行い,性質や解表現がそれぞれ異なる組合せ最適化問題であるナップサック問題,巡回セールスマン問題,フローショップ問題を例として,各問題に対する部品と距離の評価方法を示した。さらに,局所探索法の探索構造に立脚し,生成する近傍を良い解方向へ限定することで計算時間を短縮する新たな最適化手法を提案した。また,距離の観点によるPOPの評価を用いて多様化・集中化の観測と制御を行い,近傍の生成回数を減少させつつ高い探索性能を実現した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い,移動戦略における(1)探索履歴情報の時間的・空間的広がりと変換・活用戦略,(2)探索点間の相互作用と生成される探索のダイナミクス,を近接最適性原理の観点から統一的に解析することで,メタヒューリスティクスの汎用設計論を構築し,これに基づく新たな連続・離散型メタヒューリスティクスの開発と性能評価を推進する。
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