研究概要 |
本研究の目的は,カオス・フラクタル理論を用いてエッジ領域における魚類の複雑な適応行動を分析して魚行動モデルを構築し,定置網漁におけるクラゲ被害防止のためにクラゲと魚を分離する定置網漁法に応用させ,漁網に関するクラゲと魚の行動についてシステム工学と水産学を融合させた総合的な技術として完成させることにある. この目的に沿った平成22年度の研究計画に対する実績を以下に示す. 1.魚遊泳画像から行動解析するシステムを用いて環境刺激を受けた魚の行動軌跡の抽出に成功しているが,環境ノイズを低減する処理を加えて実際的な環境における魚行動を計測できる画像解析手法を確立することができた. 2.カオス・フラクタル理論により時系列データを分析する手法を開発し,これを用いて魚の遊泳行動が有するゆらぎやリアプノフ指数等のカオス量,自己アフィン指数等のフラクタル量を抽出することができ,魚の漁網壁認識行動を解析することができた. 具体的には,クラゲは漁網のメッシュサイズが大きいと定置網から抜けるが魚は流れの中で自立行動を取ることができることから,魚はメッシュサイズがどの位の大きさで壁と認識して入網するかを実験で調べた.個体数を1匹として5cm,10cm,15cmサイズを用いて徳島県水産研究所に設置されている水槽で実験し,カオス・フラクタル理論による定量分析で15cm以下のメッシュで魚は漁網を壁と同様に認識して行動をとることがわかった. 3.得られた研究成果を電子情報通信学会,日本水産学会,IEEE発表するとともに,本研究を進展させるのに有益な学術情報を収集することができた. 以上により,研究計画による「フェーズ1:漁網のメッシュサイズと魚の漁網壁認識行動との関連についてカオス・フラクタル理論を用いて解析」することが達成された.
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