研究概要 |
本研究の目的は,カオス・フラクタル理論を用いてエッジ領域における魚類の複雑な適応行動を分析して魚行動モデルを構築し,定置網漁におけるクラゲ被害を防止するために魚とクラゲを分離する定置網漁法に応用させ,漁網に関するクラゲと魚の行動についてシステム工学と水産学を融合させた技術として確立することにある. この目的に沿った平成23年度の研究計画に対する実績を以下に示す. 1.前年度はアジを試験魚とし1個体とした場合の行動解析であったが,本年度はアジ50匹を供試魚とした魚の群れが,定置網の道網部に設置するクラゲ防止システムの目合(漁網メッシュ幅)に対してどの様な行動をとるかを水槽実験し,統計解析により分析した. 2.アジ50匹による魚群行動の水槽実験より取得した魚群サイズと魚群の空間的運動の時系列分析により,定置網に用いるメッシュ幅は体長の2倍程度以下であるなら「壁に対するのと同じ群れ行動 : 漁網を抜けることなく並進する」ことが判明した. 3.魚行動のモデリングに関しては個体数が「1」の場合に,精度の高い行動シミュレーションが可能であることを水槽実験とコンピュータシミュレーションのデータをカオス・フラクタル解析することで比較し,明らかにした.具体的には,様々な形状の水槽で試験魚を遊泳させた場合に,そのエッジ領域の環境刺激に応じた壁並進性とコーナー脱出アルゴリズムに魚の泳速について主方向をガウス分布,泳速ノルムをアーラン分布でモデル化することで実現することができた. 以上により,研究計画の「フェーズ2 : 様々なメッシュサイズの漁網に対する魚の群行動についてシステム工学的アプローチを用いてモデリングを実施」が達成できた
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今後の研究の推進方策 |
先の項目で遅延していることを補い,本研究の目的を達成するために今後取り組む研究計画を以下に示す. 1.魚群中の各個体を画像から動的に分離してラベリングできるソフトウエアを開発中であるが,これを完成させて魚群のカオス・フラクタル解析を実施する. 2.徳島県水産研究所との連携を密にして実験回数を増やして統計学的議論のできるNを達成するとともに,水流刺激などを考慮した現実に近い環境刺激を魚群に与えることで水産学的な議論ができる実験を実施する. 3.上記の結果を用いてより精密な魚行動モデルを構築し,クラゲ抜き漁網の最適メッシュ幅を決定してクラゲ被害防止システムの設計指針を確立する.
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