研究概要 |
本研究の目的は,カオス・フラクタル理論を用いて魚の複雑な適応行動を分析して魚行動モデルを構築し,定置網漁におけるクラゲ被害を防止するために魚とクラゲを分離する定置網漁法に応用させ,漁網に関する魚行動についてシステム工学と水産学を融合させた技術として確立することにある.この目的に沿った平成24年度の研究計画に対する実績を以下に示す. 1.前年度は漁網に対する魚群行動の統計解析であったが,本年度は魚群行動のカオス・フラクタル解析により定置網の道網部に設置するクラゲ防止システムの漁網メッシュ幅に対してどの様な行動をとるかを分析するため,3,6,12,24匹と魚群サイズを変えて水槽実験を実施した. 2.水槽実験より取得した魚群行動の泳速に関する時系列データと遊泳軌跡の幾何データのカオス・フラクタル解析により,定置網に用いるメッシュ幅は体長の2倍以下で「壁に対するのと同じ魚群行動:漁網を抜けることなく並進する」ことを数値的に明らかにした. 3.魚行動のモデリングに関して,魚群行動を計算機シミュレーションが可能であることを水槽実験とコンピュータシミュレーションのデータをカオス・フラクタル解析することで比較して明らかにした.具体的には,魚群の遊泳水域におけるエッジ領域(:漁網の近傍)の誘引・忌避的刺激に応じた行動フィールドのポテンシャルを定義することで漁網に対する魚群行動をモデルを実現し,数値実験を実際の水槽実験と比較することで,漁網に対する魚群行動の定性的な見積もりができることが判明した. 以上により,研究計画の「フェーズ3:魚の漁網壁認識行動とその群行動のシステム工学的考察を基にクラゲは抜けるが魚は抜けない最適なメッシュサイズの決定法を確立」は達成できたが,魚群サイズの違いによる漁網に対する魚行動パターンの詳細な分析と実際の定置網でにおける効果検証については今後の課題となった.
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