本年度(最終年度)は、昨年度までに確立したキャスト法での透過用空中超音波トランスデューサにより物質内部の透過画像形成を行った。観測対象物は、ICおよびLSIを用いた。この結果、所期の目的の通りIC(LSI)の透過画像形成に成功した。以下に、得られた成果と現時点での課題を簡潔に述べる。 <成果> 1.本研究では、コポリマーであるP(VDF/TrFE)を用いると、溶液から直接レゾネータ(バッキング板に直接密着している)が製作できることに着目し、接着ロスのないトランスデューサを開発した。この結果、平面型ではあるが60~80dBの性能の空中用圧電高分子トランスデューサを完成させた。 2.上項1.で開発した2~2.5MHz空中用トランスデューサの電気機械結係数(最大kt=0.3)は、PZT(kt =0.51)と比較して小さいが、抗電場が約10倍大きいため、高電圧印加が可能である。このため、kt値の差を補えることが分かった。 3.高周波(MHz帯域)用の送受信装置を開発し、先行研究としてLSI(通称8255)の裏面に3種類の真鍮板を取り付けて透過画像を形成した結果、これらの画像化(2MHz)に成功した。引き続きφ10mmの平面型P(VDF/TrFE)空中用トランスデューサ(2.5MHz)を開発し、IC( ROCKWELL 11229-12)の画像形成を行った。この結果、高分解能ではないが、IC内部のChipの画像化に成功した。 <現時点での課題>:画像の分解能の向上のためには、焦点型のトランスデューサの開発を必要とするが、バッキング板とP(VDF/TrFE)との接着力が小さいため大きな外圧(変形)を与えると剥離する。また、1つのトランスデューサでの送受信兼方式による物質内部の画像形成のためには、更なる高効率のトランスデューサの開発が必要である。
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