ナノ材料作製やバイオ技術などでは、試料位置決めステージの変位をナノ精度で測定する必要がある。しかし、現状のナノ精度変位計測は、測定範囲が最大でも100μm前後に制限される。本研究では、10ナノメートルの測定精度と10ミリメートルの測定範囲を兼ね備えた変位計測技術を開発することを目的とした。具体的には、100GHz以上の周波数掃引をする光ミリ波光源を新たに開発し、申請者らが研究を進めてきた二光子吸収方式レーザ変位計測へ適用することを目標とした。 本年度は、光ミリ波発生器の開発に向け、2台の波長可変レーザのビートを利用した光ミリ波発生を検討した。そのために、まず2台の波長可変レーザの安定化制御を検討した。この手法では、各レーザの周波数安定性や、周波数再現性が、光ミリ波発生器の性能を左右する。そこで、掃引速度や掃引時間などの条件を変えて、周波数掃引安定性や再現性についてのデータを蓄積し、最適な条件を明らかにした。また、周波数掃引に伴う光パワー変動を補償するために、半導体光増幅器を後段に接続し、周波数の変動と連動して増幅率を変化させる構成を検討し、制御信号を明らかにした。これにより、100GHzの周波数範囲を1sで掃引する光ミリ波光源を実現した。また、これとは別に、THz以上の周波数範囲を掃引可能な光ミリ波光源も構築した。更に、ナノ変位計測評価用に、安定なマイケルソン干渉計の構築と評価を行い、次年度以降の研究を進める上でのの問題点の洗い出しを行った。
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