研究課題/領域番号 |
22560414
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
山田 晃 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 教授 (20159213)
|
キーワード | 超音波トモグラフィ / 医用超音波画像診断 / 内蔵脂肪症診断 / 音波伝搬時間測定 / 生体組織音速の映像化 / 計算機画像再構成 / 人体腹部断面の可視化 / 生体弾性物理量計測 |
研究概要 |
本研究では、腹部体表周囲上の透過型超音波伝搬時間測定に基づいた腹部断面音速トモグラフィ映像装置の実現とその内臓脂肪検査への応用を目的した検討を行った。研究初年度である昨年度の体表密着型高速回転走査機構によるデータ取得、についての基礎的検討結果をもとに、2年目にあたる本年度は、臨床用コンピュータ制御自動検査システムの完成に向けてた諸検討を行った。具体的には、座位状態の被験者の腹部周囲を、回転、平行、密着の三方向に対向超音波送受信器対を走査する腹部スキャナー装置を構築した。その際、本手法では脊髄を通る経路を除外する必要があり(脊髄が音波の障害物になるため)、脊髄を走査回転中心に一致する位置に配置する。また、被験者の体格や座位などの、測定条件の変化に対応する必要がある。これらの問題に対処するために、体表輪郭のレーザ計測ならびに脊髄位置推定に基づいて、走査範囲や送受信経路を適応的に選択できるようにした。また、体表輪郭計測結果に加えて、受信音波振幅をモニタすることにより、体表/送受信器間の押し込み距離や接触角によらず、最適な音響的接触状態を維持するための制御方法について検討した。最後に、腹部模擬ファントムを用いた評価試験の結果、本走査装置を用いて、脂肪組織と蛋白組織の音速の違いが十分な精度で区別できる画像再現結果を示すことができ、提案法の有効性が確認された。最終年度の次年度では、音波測定から内臓脂肪領域抽出に至るまでを自動検査可能な装置として完成させていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本装置は、回転、平行、接触の三方向の機械走査機構とそのコンピュータ制御装置からなる大規模なシステムとなっているが、既存品の転用が難しく、装置の大半を手作りで製作してきた。その装置製作に時間がかかり、進行状況が予定よりやや遅れ気味となった。現在は装置がほぼ完成しているため、今後の巻き返しにより目標が達成できる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、箱物としての装置がほぼ完成した段階であり、被験者を対象とした評価試験がこれからの課題として残されている。実際の検査場面においては、被験者の体格、脊髄の位置と寸法、座位、体動、など様々な測定変動要因が予想される。これらに柔軟に対処できる計測制御システムの開発(ソフトウェア開発が中心)が、今後の主な検討課題である。これらを準備した上で、多数の被験者を対象とした腹部内臓脂肪検査試験を実施し、提案法の医学的、工学的有効性を検証し実用化につなげていきたいと考えている。
|