本研究では、腹部体表周囲上の超音波伝搬時間測定に基づいた音波トモグラフィ内臓脂肪検査装置の実現に向けた諸課題の検討ならびにその評価試験を行った。具体的には、腸内ガスを含む腹腔内長距離間の伝搬時間を減衰の影響を受けずにオープンエアー体表密着測定するために、低周波帯(数百kHz帯)の広帯域圧電送受波器(40mmΦ円形開口)を対向させて機械走査する方式を用いた。また、体表送受波器間の接触条件の違いをカバーしながら音響的接触状態を良好に保つために、半球状のカップリングゲルを送受信器前面に装着した。回転(内径:720mm)、平行(ストローク:600mm)、密着(ストローク:300mm)の三方向の自動ステージに取り付けられた対向送受信器対を、コンピュータ制御により腹部体表上の任意の伝搬経路上に機械移動させながら観測する。その際、脊髄を通る音波送受信データを回避(脊髄が音波の障害物になるため)した際の情報損失を最小限に抑えるために、走査回転中心を脊髄に一致させるよう送受信経路を決定した。このために、体表輪郭のレーザ計測ならびに脊髄位置推定に基づいて、被験者の体格や座位に合わせて、走査範囲や送受信経路を適応的に選択するようにした。さらに、受信音波振幅をモニタしながら体表/送受信器間の押し込み距離を制御することにより、体動や機械移動誤差が避けられない状況にあっても、最適な音響接触状態を実現できるようにした。最後に、腹部模擬ファントムを用いた評価試験の結果、伝搬時間測定ならびに音速断面映像の再現結果とも理論値と比較的良く一致する結果が示された。また、脂肪組織と蛋白組織の音速の違いが区別でき、提案法の有効性が確認できた。人体を対象にした評価試験については課題が残されたものの、音波測定から内臓脂肪領域抽出に至るまでを自動測定可能な検査装置として完成させることがきた。
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