研究課題/領域番号 |
22560419
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
濱田 昌司 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20246656)
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キーワード | 経頭蓋磁気刺激 / 誘導電流 / コイルアレイ / ボクセル / 電流分布合成 / 電磁界解析 / 回路解析 |
研究概要 |
経頭蓋磁気刺激装置を念頭に置き、多数(数百個程度)個のアレイ型磁界源を使用して頭蓋内に所望の誘導電界分布(に近い誘導電界分布)を合成することを目指し、磁界源のパラメータ設定を決定する手法を順計算法と逆計算法の両面より検討してきた。平成23年度の主要な成果は以下の通り。全コイル電流を設定すれば詳細人体頭部ボクセルモデル内の合成誘導電界を自由に求められるという計算環境を整備した。ただし、コイル個数と同数の大規模データのファイル読み込み部が低速なため、実行所要時間(計算所要時間では無く)についてはさらなる改善を要する。一方、アレイ型ヘッドコイル群の自己インダクタンスと相互インダクタンスとを求めた上で、定常交流回路解析への組み込みを行い、コイル電流の決定精度の改善を図った。計算例として、1個のコイルを理想交流電圧源で励磁し、他の全コイルを個別短絡してシールドコイルとして配置し、全コイルの通電電流を回路解析により決定して合成電界を計算した。経頭蓋磁気刺激用途でのシールド効果の有効性については、漏れ磁束の低減により誘導電界をモデル深部まで侵入させられたもののその効果は大きくなく、モデル浅部の強電界領域も拡大傾向を示し強電界領域の絞り込みの観点からは必ずしも有効な結果とはならなかった。ただし、コイル電流・誘導電界分布の計算精度向上には成功している。また、ボクセルモデル用表面電荷法を分極モーメント法に改造し異方性媒質を取り扱う順計算法につき、ボクセル当たり3未知数を用いる基本手法から出発して、6未知数化により精度を改善し、さらに任意方向の異方性を取り扱い可能にした。さらに表面電荷法との併用も可能にし、計算法上の大きな進歩を得た。導電性解析への拡張作業が完了すれば、誘導電界分布の推定精度向上が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル内誘導電界分布の順計算手法に関しては、汎用化・高精度化・高速化の全ての面で成果が上がっており、特に異方性の考慮に関しては計算電磁気学上の新規性の高い成果を得ている。コイル電流の逆計算手法に関しては、十分な進展があったとは言い難いが、脳神経賦活位置の逆計算手法については、2状態の共分散行列の同時対角化に基づく手法を提案しており、逆計算技術力の向上は継続的に実施できている。以上を総括すると、全体としては概ね順調な進展状況であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
マグネトメータ型コイルとグラディオメータ型コイルとの効果的な併用法に関する検討を優先課題とする。既知の誘導電界分布を初期設定とし、徐々に所望の局所領域に対応する重みを増加させて電界の集中を狙う方法を検討する。コイルの自己・相互インダクタンス等を考慮した定常交流解析を高度化しつつ、過渡解析も行う予定である。分極モーメント法により導電率異方性を解析可能にし、生体組織の異方導電性を考慮した解析を予定している。GPUの使用などにより引き続き計算速度の向上に努める予定である。
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