本研究は、これまで組織観察等からしか評価できなかった鉄鋼材の材質変化を、電磁気センサを用いることによって、非破壊的に評価可能となる材質評価システムを構築することを目的とする。具体的には、磁気的信号であるバルクハウゼン信号(特に、研究代表者らが考案した「回転バルクハウゼン信号」)を中心として、これまで研究代表者らが研究成果を挙げてきた電磁気センサを複合的に用い、ミクロスコピックな評価が不可欠であった材質変化の評価を、非破壊的な計測システムにて実現する。研究代表者らは、電磁鋼板を対象として回転バルクハウゼン信号測定システムの開発を行ってきた。同システムによって、電磁鋼板の回転バルクハウゼン信号の基礎的な挙動を明らかにした。本測定システムをベースとして機械構造部材の材質評価システムを製作する。 本年度は、(1)非破壊材質評価システムの製作、(2)完成した非破壊材質評価システムによる材質評価計測、の2項目を実施した。(1)非破壊材質評価システム用センサとして、バルクハウゼン信号を測定するセンサと磁束密度Bと磁界強度Hを同時に測定する磁気センサを製作した。同評価システムによりバルクハウゼン信号が測定可能であることを明らかにした。更に、磁束密度Bと磁界強度Hを同時に測定する磁気センサを用い、条件の異なる熱処理材の評価を行った。その結果、製作した評価システムによって、熱処理材の材質評価が可能であることを明らかにした。最終的には、実際の自動車シート用部材へも適用し、製品レベルの焼入れ有無判別が可能であることを明らかにした。
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