本研究は、これまで組織観察等からしか評価できなかった鉄鋼材の材質変化を、電磁気センサを用いることによって、非破壊的に評価可能となる材質評価システムを構築することを目的とする。具体的には、磁気的信号であるバルクハウゼン信号(特に、研究代表者らが考案した「回転バルクハウゼン信号」)を中心として、これまで研究代表者らが研究成果を挙げてきた電磁気センサを複合的に用い、ミクロスコピックな評価が不可欠であった材質変化の評価を、非破壊的な計測システムにて実現する。研究代表者らは、電磁鋼板を対象として回転バルクハウゼン信号測定システムの開発を行ってきた。同システムによって、電磁鋼板の回転バルクハウゼン信号の基礎的な挙動を明らかにした。本測定システムをベースとして機械構造部材の材質評価システムを製作する。 初年度、次年度の研究結果から、最終年度は非破壊材質評価システムの検証を行っていくと共に、問題点を明白にし、非破壊材質評価システムの改良・修正を行った。最終年度後半以降は、非破壊材質評価システムによる材質評価データベースを構築するために、X線残留応力試験機で測定した残留応力分布の結果とバルクハウゼン信号のVrms(実効値)の結果を比較し、圧縮、引張り応力が大きい箇所に対し実効値の相関があることを明らかにした。また、今回測定した条件下では制御磁束密度がB = 0.6 (T)の時に顕著に応力の変化あることが分かった。
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