本研究は、誘導ブリルアン散乱を応用し、光ファイバにそったひずみの分布を測定する技術に関するものである。これまでの測定技術は、時間領域測定法(BOTDA)とコヒーレンス領域測定法(BOCDA)に大別される。それぞれ一長一短があり、いずれの技術も、高い性能が要求される建築分野での実用化までに至っていない。本研究は、BOTDAの距離分解能、測定距離と、測定時間(1点および分布点)に関する全ての性能を同時に向上させることを研究の目的とする。 これまで、BOTDAの測定信号のSN比を向上させ、ひいては距離分解能の向上、測定時間の短縮を可能とするために、Golay符号(相関符号の一種。サイドローブの雑音が原理的にゼロである特長をもつ)を使用して、パルスポンプ光を符号化する技術を研究開発した。それらは次の2種類である。 a) ブリルアン増幅を効率よく発生させるためのパルスポンプ光一つに、符号の要素である測定用パルス光一つを組み合わせる方法 b) 上記のパルスポンプ光一つに、全ての符号要素の測定用パルス列を組合わせる方法 本研究では、互いにその特性を補完してそれぞれの優れた特徴だけを引き出すためにa)の符号と、b)の符号を入れ子構造とする方法を提案した。この符号化パルスポンプ光は、ブリルアン利得を最大化するポンプ構造としつつ、かつ、相関符号としての特性を良好に維持し、また、符号ビットパルスを密に並べることができる。計算機シミュレーションおよび実験の両面から研究を行い、本技術の有効性を検証した。その研究成果の一部は、国際会議1件、国内大会7件で発表した。また、特許出願1件も行った。
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