研究課題/領域番号 |
22560427
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
堀口 常雄 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (70348902)
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キーワード | 計測工学 / スマートセンサ情報システム / リモートセンシング / 応用光学・量子光学 / 光ファイバセンサ |
研究概要 |
本研究は、誘導ブリルアン散乱を応用し、光ファイバにそったひずみの分布を測定する技術に関するものである。これまでの測定技術は、時間領域測定法(BOTDA)とコヒーレンス領域測定法(BOCDA)に大別される。それぞれ一長一短があり、いずれの技術も、高い性能が要求される建築分野での実用化までに至っていない。本研究は、BOTDAの距離分解能、測定距離、測定時間(1点および分布点)に関する全ての性能を同時に向上させることを研究の目的とする。今年度の研究成果は次の通りである。 1.昨年度の、入れ子構造符号化技術の提案に続き、今年度は、提案符号の符号化および復号化の原理実証のための定式化を行い、さらに、計算機シミュレーションと同一条件での実験による検証を行った。その結果、外側符号、内側符号によるそれぞれ4dBの信号対雑音比の改善、総合で8dBの改善を、10cmという高距離分解能で実現した。これらの実験結果はシミュレーションと良く一致するものである。以上の理論、実験両面の成果をまとめ、現在、論文を投稿中である。 2.入れ子構造符号化に使用する符号には、これまで相補相関符号を使用してきたが、研究を推進する中で、その他の符号を組合せる着想も得た。このアイデアを生かした研究も来年度に展開予定である。 3.ポンプ光およびプローブ光のスペクトル制御技術の研究では、その実現に必要な多周波数発生技術の実験的検討をまず行い、9本の周波数を等間隔に持つポンプ光とプローブ光のセットを発生させることに成功した。 4.以上の研究の推進中に、本研究技術を動的回折格子の発生にも応用し、BOTDAのさらなる測定精度の向上や応用分野の拡大に役立てる着想も得た。そこでこれまで報告例がほとんどなかった通常の単一モード光ファイバに生成した動的回折格子の精密測定方法を開発し、その基本特性の測定に成功した。 以上の成果の一部をまとめ、論文1件、学会発表4件の対外発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の柱の一つである入れ子構造符号化技術は、理論および実験の両面で、良好な結果が得られている。 唯一、残された課題は、入れ子構造における外側符号の長さが、実験では、光変調器のドライブ回路の周波数特性の影響により、8bits程度までに制限されたことである。しかし、この課題の解決方法に関する基礎検討は終えており、来年度(平成24年度)には、解決の見通しである。また、研究のもう一つの大きな柱であるポンプ光およびプローブ光のスペクトル制御技術についても、その実現に必要な多周波数発生技術の実験的検討はほぼ終えている。さらに以上の研究を進める中で、入れ子構造符号に使用する符号として、これまで取り上げてきたGolay相補相関符号以外の符号も使用する着想も得ている。
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今後の研究の推進方策 |
入れ子構造符号化技術については、昨年度(平成23年度)に理論および実験の両面で進捗があったので、それらの成果をまとめ、論文投稿中である。ただし、上記11.で述べたように、この技術には、一部、未解決のものが残されている。そこで、今年度、新たなアイデアによってこれも解決し、その実用性を高める予定である。また、昨年度に得られた着想である、Golay相補相関符号以外の符号を使用した入れ子構造符号化技術のBOTDAへの適用の研究も展開する。そしてその新しい技術と、これまで研究を進めてきたGolay相補相関符号を適用した入れ子構造符号BOTDAとの比較検討を行う計画である。
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